非常時用Webサイト解説サイト

Emergency website for BCP

公式Webサイトが止まっても、
住民の方への発信を止めないために

この資料は、自治体の公式Webサイトが障害やサイバー攻撃で閲覧できなくなったときに備えて、 既存のシステムから切り離した「非常時用の独立サイト」を平時から用意しておく考え方をご説明するものです。 背景にある脅威、仕組みと構成、費用とスケジュール、運用の進め方までを順を追ってまとめています。 左の目次から、知りたいところへ直接移動できます。

Background

自治体が直面している脅威

公式Webサイトへのサイバー攻撃やシステム障害は、どの自治体でも起こりうる状況になっています。 2026年10月には、自治体のWebサイトが置かれていたクラウドサービスがランサムウェア攻撃を受け、 複数の自治体で公式サイトが閲覧できなくなりました。

2026年10月のクラウド障害

株式会社IDCフロンティアの法人向けクラウド「IDCFクラウド」の一部がランサムウェア攻撃を受け、 そこで動いていた企業・自治体のサーバーが停止しました。茨城県と茨城県警のWebサイトもこの障害で閲覧できなくなっています。

  1. 10月7日 3:40頃IDCFクラウド 東日本リージョン1の4ゾーンで仮想サーバーが停止し、再起動できない状態に
  2. 10月7日 4:15茨城県のWebサイトが閲覧できなくなる(県警のWebサイトも同様)
  3. 10月7日 20:18IDCフロンティアが、原因はランサムウェア攻撃であると公表
  4. 10月8日茨城県が別のサーバーで暫定版のWebサイトを開設。電子申請や災害情報など、緊急性の高い情報へのリンクを掲載
  5. 10月8日 21:02IDCフロンティアが、影響のあった4ゾーンの顧客データは取り出しや復元が困難な見通しと公表
  6. 10月9日 15:30小平市が暫定サイトを開設(電子申請・公共施設予約など一部の手続きが利用可能に)
  7. 10月13日茨城県は臨時ページでの案内を継続
495の企業・自治体IDCフロンティアが公表した、影響を受けた顧客の数(内訳は非公表)
約60時間小平市で、障害の発生(10月7日未明)から暫定サイトの開設(10月9日15:30)まで

データの復元は顧客自身のバックアップからのみ可能とされ、Webサイトを置いていた側が別の環境で作り直す必要がありました。

この障害で影響が出た自治体の例(公表・報道をもとに整理)
自治体影響対応
茨城県県・県警のWebサイトが閲覧不可10月8日に暫定版を開設。県・警察・議会・教育委員会の区分で案内
小平市市のWebサイト、市議会サイト、粗大ごみ申込ページが閲覧不可10月9日に暫定サイトを開設。問い合わせフォームの情報は漏えいの可能性があると公表
焼津市市立図書館のWebサイトが閲覧不可蔵書検索・予約は別システムで継続
湖西市市立図書館のWebサイトに接続できない暫定ページを作成
滋賀県県の3サイトで閲覧障害報道発表で原因を説明
札幌市外部の自動翻訳サービスの障害で、Webサイトの自動翻訳機能が停止—

出典:IDCフロンティアの公表(第1報〜第4報)、各自治体の公表、報道(東京新聞・茨城新聞ほか)。経緯は piyolog「IDCFクラウドへのランサムウェア攻撃についてまとめてみた」の整理(10月13日時点)を参照しました。

有事の情報発信で起きやすい3つの課題

01

脅威の現実化

予期しない攻撃や障害は、自治体の規模や対策の水準にかかわらず発生します。今回のように、Webサイトを置いているクラウドや委託先の側で起きることもあります。

自治体のシステムに問題がなくても、委託先の基盤が止まればWebサイトも止まります。

02

情報発信の停滞

障害が起きると、情報政策課などの担当部署は復旧作業や原因の調査に追われます。その間、医療・災害・防犯といった、住民の方の安全に関わる情報の発信が止まってしまうおそれがあります。

今回の障害では、暫定サイトの開設まで翌日〜約2日半かかった例がありました。

03

代替ページの限界

障害時にPDFや画像で作った「お知らせページ」を掲示する方法では、スマートフォンで読みにくく、音声読み上げソフトをお使いの方には内容が伝わらないことがあります。

次の「代替ページの見え方の違い」で実際にお確かめいただけます。

代替ページの見え方の違い

同じお知らせを、画像で掲示した場合と文字(テキスト)で掲載した場合で比べます。ボタンで切り替えると、スマートフォンでの見え方と、音声読み上げソフトが読む内容が変わります。

ボタンを押して、表示を切り替えてください

○○市ホームページ 障害のお知らせ

令和8年10月7日 4時30分 現在

現在、システム障害により市ホームページを閲覧できない状態です。復旧の見込みは立っておりません。

避難所の開設状況
  • ○○小学校(体育館)
  • ○○公民館
  • ○○コミュニティセンター ほか4か所
休日夜間の急病診療

○○市休日夜間急病診療所
電話 000-000-0000(受付 19時〜22時)

電子申請・各種手続き

電子申請は別システムのため、通常どおりご利用いただけます。

読み上げ音声読み上げソフトが読む内容

「画像」
(画像に文字の代わりとなる説明がない場合。お知らせの中身は読み上げられません)

「見出しレベル1、○○市ホームページ 障害のお知らせ」
「令和8年10月7日 4時30分 現在」
「見出しレベル2、避難所の開設状況」「リスト 3項目……」

  • スマートフォン文字が小さく、拡大しないと読めません画面の幅に合わせて文字が折り返されます
  • 読み上げ内容が伝わりません見出しごとに移動しながら聞けます
  • 文字の拡大拡大すると画像がぼやけ、画面からはみ出します拡大しても鮮明に表示されます
  • 検索・翻訳文字として扱われず、検索や翻訳の対象になりませんブラウザの翻訳機能でも読めます

Solution

既存の環境から切り離した「非常時用の独立サイト」

本パッケージでは、全庁サイトとは別の場所に、緊急時の情報発信に絞った独立サイトを構築し、平時から待機させておきます。 既存の保守ベンダー様の管理領域や全庁ネットワークには干渉しないため、全庁サイトで障害が起きても、独立サイトは影響を受けにくい構成です。

平時と有事の動き

ボタンで「平時」と「全庁サイトの障害発生時」を切り替えると、2つのサイトの状態と、情報を発信する方の動きが変わります。

全庁サイト(既存)公開中閲覧できない
www.city.xxx.lg.jp
  • CMS・サーバー既存ベンダー様が管理
  • データセンター・クラウド委託先の基盤
  • 全庁ネットワーク庁内の回線・機器

いつもどおり、すべての行政情報を発信します。障害の調査と復旧に、情報政策課様と既存ベンダー様が専念します。

非常時用の独立サイト待機中緊急情報を発信中
bcp.city.xxx.lg.jp
  • 内容の管理microCMS
  • ページの書き出しAstro
  • 配信Cloudflare(世界分散の配信網)

平時は防災訓練での投稿や、定期的な内容の確認に使います。避難所・医療・防犯など、住民の方の安全に関わる情報をテキストで発信します。

資本・回線・運用体制が別系統

情報政策課様全庁サイトの運用全庁サイトの復旧に専念
広報課・危機管理課様訓練で投稿の操作を確認スマートフォンやタブレットから直接投稿
住民の方全庁サイトを閲覧公式のサブドメインで緊急情報を確認

提案のシステム構成

フロントエンドに「Astro」、CMSに「microCMS」、配信基盤に「Cloudflare」を組み合わせた、Jamstack と呼ばれる構成です。

  1. 内容の管理microCMS担当の方が、スマートフォンからも記事を投稿・更新する管理画面。国産のヘッドレスCMSです。
  2. ページの書き出しAstroCMSの内容から、軽くて速い公開用のページを作ります。
  3. 配信Cloudflare書き出したページを、世界各地の拠点から住民の方へ届けます。

microCMSは自治体の公式サイトでも使われており、渋谷区の公式サイトが同社の導入事例として紹介されています (microCMS 導入事例:渋谷区・別ウィンドウで開きます)。

ヘッドレスCMSとJamstackの仕組みは、補足資料の「ヘッドレスCMS解説サイト」で詳しくご説明しています。

Why this stack

この構成を採用する理由

3つのサービスは、それぞれ「止まりにくさ」「改ざんされにくさ」「誰にでも届くこと」を受け持ちます。

Cloudflare の採用理由

止まりにくく、改ざんされにくい配信基盤

01単一障害点のない分散配信網

世界330以上の都市に分散した拠点からページを配信します。特定のデータセンターに依存しないため、一部の拠点で障害が起きても、ほかの拠点から配信を続けられます。

02アクセス集中に強い容量

Cloudflare のネットワークの外部接続容量は約500Tbps(2026年4月 同社公表)です。大規模災害時のアクセス集中や、大量のアクセスを送りつける攻撃(DDoS)を吸収・分散できる規模を備えています。

03静的なファイルだけを配信

公開されるのは、あらかじめ書き出したページのファイルだけです。公開側にOSやデータベースが無いため、ランサムウェアなどの侵入の入口になる部分を大きく減らせます。

04管理者まわりの保護

Cloudflare Zero Trust を組み合わせると、プレビュー画面など関係者向けのページへの接続を、許可した人や端末に限定できます。

microCMS の採用理由

担当の方が直接発信でき、安全性を保ちやすいCMS

01管理側と表示側の分離

記事を管理する画面(microCMS)と、公開用のサイトが分かれています。公開サイトから、管理用のデータやサーバーの内部にたどり着く経路がありません。

02SQLインジェクションなどへの耐性

公開サイト側にデータベースやサーバーでの処理が無いため、SQLインジェクションのような、データベースを狙う攻撃が成り立ちにくい構造です。

03セキュリティ対策は提供元が対応

SaaS(インターネット経由で使うサービス)のため、脆弱性への対策やアップデートは提供元が行います。自治体側でソフトの更新作業を行う必要がありません。

04担当の方が直接、すぐに発信

有事の際は、情報システム部門を経由せずに、広報課や危機管理課の担当の方がスマートフォンやタブレットからログインし、緊急情報を投稿できます。

Astro の採用理由

速く表示され、誰にでも届くページ

01軽く、速いページ

不要なJavaScriptを含まない、軽いページを書き出せます。災害時など、通信が混み合ったり遅くなったりする状況でも、情報を素早く表示しやすくなります。

02アクセシビリティの土台

高齢の方や障害のある方を含め、誰もが情報を得られるよう、JIS X 8341-3 と WCAG 2.2 の達成基準(レベルA)を満たす画面を標準で実装する土台として適しています。

Why MRP

当社にお任せいただく理由

非常時用のサイトは、「メインのシステムと同時に止まらないこと」に価値があります。そのため、作る会社と置く場所も別系統にしておくことが大切です。

リスクの分散:別系統のベンダーによる備え

既存の保守ベンダー様に暫定サイトの構築を依頼した場合、ベンダー様のネットワークや基盤が攻撃を受けると、本番サイトと暫定サイトが同時に止まる(共倒れになる)おそれがあります。

Jamstackに特化した開発体制

当社は、静的サイト生成とヘッドレスCMSを組み合わせた、軽量・高速で安全性の高いWeb開発を専門としています。機能を有事のテキスト発信に絞ることで、予備費の枠内に収まる費用と、最短1.5か月という期間での構築を可能にしています。

既存ベンダー様と競合しない役割分担

既存システムの領域や保守契約には干渉しないため、既存ベンダー様の業務と重なりません。「ベンダー様がメインシステムの復旧に専念している間の、別系統の備え」という位置づけを明確にし、庁内や既存ベンダー様へのご説明に使える責任分界点の整理をお手伝いします。

千葉県での実績とアクセシビリティの知見

船橋商工会議所様をはじめ、地域の公的機関のWebサイト構築・運用の実績があります(microCMS × Astro × Cloudflare の構成)。あわせて、Webアクセシビリティ(JIS X 8341-3・WCAG 2.2)の知見をもとに、誰にでも伝わる情報発信の基盤をご提供します。

責任分界点の例(実際の分担は、ご要望に合わせて取り決めます)
作業自治体様既存ベンダー様当社
全庁サイトの運用・保守・復旧◯◯(主担当)—
独立サイトの構築・保持——◯(主担当)
独立サイトへの切り替えの判断◯(判断権限者)—助言
緊急情報の投稿◯(広報・危機管理)—操作の支援
サブドメインの設定(DNSへのCNAME追加)◯(承認)設定作業(ご依頼時)設定値の提示

DNSの設定作業を誰が行うかは、ドメインの管理状況によって異なります。既存ベンダー様の作業はサブドメインの追加に限られ、全庁サイトの構成には影響しません。

Cost & schedule

スケジュールと概算費用

機能を有事のテキスト発信に絞り、今年度の予備費などで導入しやすい価格帯と期間に設定しています。

概算構築費用80〜100万円(税抜)機能を有事のテキスト発信に絞った構成です。
導入スケジュール最短1.5〜2か月既存システムへの影響調査が不要なため、短い期間で構築できます。年内の納品・検収にも対応します。
月額の利用料実質0円Cloudflare と microCMS(Hobbyプラン)の無料枠を使うため、CMSと配信の利用料はかかりません。※サイト公開時の構成によっては、サーバー費用が発生する見込みがあります。

導入ステップ(8週間)

運用テスト・検証では、実際の担当の方にスマートフォンから投稿していただき、切り替えの手順も確認します。

Operation design

運用・体制上のリスクと解決策

非常時用のサイトは、作って終わりではなく、いざというときに使える状態を保つことが大切です。運用面で起きやすいリスクと、当社がお手伝いする内容を整理しました。

運用・保守のリスク

リスク情報が古くなる平時に使わないため、掲載内容が更新されずに残ってしまう。
解決策定期的な確認のルール平時の更新の流れと確認体制を整え、内容が古くならない管理ルールの策定をお手伝いします。
リスクいざというときに操作できない担当の方が操作に慣れておらず、有事に投稿が遅れる。
解決策防災訓練への組み込み定期的な防災訓練・情報伝達訓練の流れに、本サイトへの投稿・更新を組み込み、操作に慣れた状態を保ちます。

ガバナンス・体制のリスク

リスク切り替えの判断が遅れる誰が、どの時点で切り替えを決めるかが決まっていない。
解決策判断基準と権限者を決める障害の継続時間などの切り替え基準と、判断権限者を定めたマニュアルの作成をお手伝いします。
リスク承認に時間がかかる通常どおりの承認の流れでは、緊急情報の公開が遅れる。
解決策緊急時の公開フローを整理通常時とは別の、簡略化した承認の流れと、microCMSでの権限の設定を整理し、運用設計を行います。
  1. STEP 1障害の発覚全庁サイトが閲覧できない状態を確認
  2. STEP 2切り替えの判断あらかじめ決めた基準(障害の継続時間など)で判断権限者が決定
  3. STEP 3独立サイトの公開待機中の独立サイトで、緊急情報の掲載を開始
  4. STEP 4発信・更新担当の方がスマートフォンから投稿。SNSなどで公式サブドメインを案内
  5. STEP 5全庁サイトの復旧後全庁サイトへ案内を戻し、振り返りを次の訓練に反映

コスト・調達のリスク

リスク維持費の予算化が難しい使う機会が少ない仕組みに、毎年の運用予算を確保しにくい。
解決策無料枠の活用CMSと配信の利用料を無料枠に収め、年間の維持費を実質0円に抑えます。追加の運用予算を確保するハードルが下がり、初期構築費のみで続けやすくなります。

技術・UXのリスク

リスク偽サイトとの見分けがつかない有事に見慣れないアドレスを案内すると、住民の方が本物か判断しにくく、フィッシング詐欺に悪用されるおそれもある。
解決策公式サブドメインで待機既存の公式ドメインのDNSにCNAMEレコードを追加し、公式のサブドメイン(例:bcp.city.xxx.lg.jp)で待機させます。住民の方が公式のアドレスだと確かめやすくなります。
リスク読めない方が出る画像やPDFの掲示では、読み上げソフトやスマートフォンで内容が伝わらない。
解決策アクセシビリティ基準の担保JIS X 8341-3 と WCAG 2.2 の達成基準(レベルA)に適合した画面設計とマークアップを標準とします。
リスク外部サービスが止まる自動翻訳などの外部連携サービスが止まると、その機能が使えなくなる(今回の障害でも札幌市で発生)。
解決策代替手段の確保手動での多言語案内の掲載や、シンプルなテキスト表示に切り替えられる構造にしておきます。

公式サブドメインのしくみ

住民の方が開くアドレスbcp.city.xxx.lg.jp
公式ドメインのDNSCNAME レコードを1行追加
非常時用の独立サイトCloudflare から配信

事前の確認:DNSの管理を全庁サイトと同じ基盤で行っている場合、その基盤の障害でサブドメインも引けなくなることがあります。導入時に、ドメインの管理場所と障害時の影響を確認します。

用語の説明

BCPBusiness Continuity Plan
事業継続計画。災害や障害が起きても、重要な業務を続ける・早く再開するための計画。
ランサムウェア
データを暗号化して使えなくし、元に戻すことと引き換えに金銭を要求する不正なプログラム。
単一障害点SPOF
そこが止まると全体が止まってしまう部分。分散させることでなくせます。
Jamstack
あらかじめ書き出したページを配信網から届け、記事の管理は外部のサービスで行うWebサイトの作り方。
ヘッドレスCMS
記事の管理機能だけを持ち、表示の部分(ヘッド)を切り離したCMS。
CDN(配信網)Content Delivery Network
世界各地の拠点にファイルを置き、閲覧者に近い拠点から返す仕組み。アクセス集中に強くなります。
DDoS攻撃
大量のアクセスを一度に送りつけて、サイトを閲覧できない状態にする攻撃。
SQLインジェクション
入力欄などから不正な命令を送り、データベースを操作する攻撃。
サブドメイン・CNAME
サブドメインは「bcp.」のように公式ドメインの前に付ける名前。CNAMEは、その名前を別の配信先に結びつけるDNSの設定。
Zero Trust
社内・庁内からの接続も無条件には信用せず、接続のたびに人や端末を確認する考え方。
JIS X 8341-3・WCAG
Webアクセシビリティの規格。JIS X 8341-3:2016 は国際的な指針 WCAG 2.0 と同じ内容で、WCAG 2.2 はその改訂版です。
SaaS
インターネット経由で利用するサービス。ソフトの導入や保守を提供元が担います。